何か遠慮があって、それを遠廻しにたずねてみると、いいえ、まだはっきり覚えているから、という答えでしたもっと年をとって、正しく覚えていることが難しくなったらば、書くことにします。あなたにも手伝ってもらいましょうな!とも祖母は言いました
本当に、それを手伝いたいものだ、と私は思いました。そうでなくても、祖母の話を聞くことが好きだったのでした祖母は覚えていることをいかにも自由に生き生きと話す人なのです。話すたびにいろんな廻り道をしながら、私もよく知っている土地の場所や家や人の名を、あの大きな椿の茂みのあるところとか、あの家の三代前のサエモンという人とか、そして調子に乗ってくると歌うように話し続けます